ロシアの電子商取引(EC)大手オゾン(Ozon)は来年初頭をめどに米国で新規株式公開(IPO)を行う意向だ。米紙『ウォールストリート・ジャーナル』などが報じたもので、すでに米証券取引委員会(SEC)に書類を提出している模様。獲得した資金は大規模な配送センターや積み出しハブ施設など物流関連施設の整備に振り向けるとみられる。ロシアのEC市場で2位に着ける同社の株式は大手企業グループ、AFKシステマが43%を保有している。
オゾンの評価額は30億~50億ドル。英証券会社ソバ・キャピタルは、この金額は現在の市場評価を上回っているとの見方を示す。同社の試算によると、この評価額に基づく同社のEV/GMV(企業価値/流通総額)は、今年のGMVが倍増した場合には1.5倍から2.4倍に拡大する。このため今後システマが保有株の一部を放出する可能性があると指摘している。
システマによると、2020年1-3月期のオゾンのGMVは前年同期比115%、4-6月期は188%増加した。7月と8月単月もそれぞれ前年同月から倍増している。ロイター通信は国営ズベルバンクがオゾンの少数株主になるための交渉をおこなっていたが成立せず、オゾンのIPO実施のきっかけになったと報じている。
ロシアではEC事業が急速に成長している。業界1位のワイルドベリーズをはじめオゾン、ズベル(旧ズベルバンク)及びIT大手ヤンデックスの大手4社は年率80%を上回る勢いで伸びており、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)の実施が成長を後押ししている。調査会社のデータインサイトによると、2020年の市場規模は前年比44%増の2兆5,000億ルーブル(約272億ユーロ)となる見通しで、うち3,000億ルーブルがコロナ禍の影響を考慮した上乗せ分とみられている。
ソバ・キャピタルによると、2024年のロシアのEC市場規模は7兆ルーブル(約761億ユーロ)に達する。オゾンはマーケットプレイスや物流能力の拡充により需要の拡大を吸収できると踏んでいる。(1RUB=1.36JPY)