ウィーン国際経済比較研究所(WIIW)が12日発表した最新の経済見通しによると、中東欧・南東欧地域がコロナ危機から迅速に回復することは難しいもようだ。ただ、景気に勢いが戻れば、サプライチェーン見直しによる消費地近隣への工場移管やデジタル市場の成長などが追い風となり、成長率が西欧を上回ると見込まれる。
WIIWによると、今年は同地域の国内総生産(GDP)が4.5%縮小する。来年は一転して3.1%増、2022年は3.3%増を見込む。予想の下敷きとなるシナリオではワクチン実用化や有効な治療法の発見でロックダウン(都市封鎖)が長引かないことを前提としている。それでも、リトアニア、セルビア、トルコを除く域内20カ国では、経済が19年水準に回復するのは22年以降となる。
中東欧の欧州連合(EU)加盟国は、比較的財政に余裕があり、欧州復興基金をはじめとするEUからの助成も期待できることから、経済支援を継続できる予想だ。一方、ウクライナやモルドバは国家債務が大きく、国外からの支援に依存しているため、支援継続は厳しい。西バルカンのいくつかの国々についても同じことが言える。トルコは金融拡大策を続ければ、国際金融市場における投資家心理の影響をさらに受けやすくなる。
ロシアは原油価格の低迷や欧米による制裁継続、保守的な財政・金融政策の維持で、来年の経済成長率が2.5%以下にとどまる。
WIIWの分析対象となったのは、東欧のEU加盟11カ国およびアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、コソボの西バルカン6カ国、ベラルーシ、カザフスタン、モルドバ、ロシアの独立国家共同体4カ国、ウクライナ、トルコの計23カ国だ。