欧州委が巨大ITに対する包括規制案発表、悪質な違反には事業分割命令も

欧州委員会は12月15日、デジタル市場で支配的な立場にある巨大IT企業への規制を強化する新たな法案を発表した。プラットフォーマーと呼ばれる大手に対し、他社のサービスを排除したり、自社サイトで自社の製品やサービスを優遇するなどの行為を禁止し、公正な競争を促すのが狙い。違反企業には巨額の制裁金を科すほか、改善されない場合は事業分割を命じる可能性もある。欧州議会と加盟国の承認を得て、2022年半ばの新ルール導入を目指す。

新たな規制案は公正な競争環境の確保を目的とした「デジタル市場法」と、違法コンテンツの排除に主眼を置いた「デジタルサービス法」の2法案から成る。現行規制の「電子商取引に関する欧州連合(EU)指令」が制定された2000年から20年が経過し、デジタル市場が急拡大する中でグーグルやフェイスブックをはじめとする米大手IT企業が支配力を強めるなど、ビジネス環境は大きく変化しており、抜本的な規制の見直しが必要と判断した。

規制の対象となるのは、EU域内のサービス利用者が人口の10%に当たる4,500万人を超えるなど、一定の条件を満たす大手IT企業。「GAFA」と呼ばれる米4社を含めた10社程度が対象になるとみられている。

デジタル市場法案はプラットフォーマーとそれ以外の企業が公平な条件で競争できるようにすることを最大の目的としており、プラットフォーマーが自社の製品やサービスを検索結果で上位に表示したり、自社サイトを利用する競合他社のデータを自社サービスが有利になるように悪用するなど、反競争的な行為を禁止する。違反した場合は世界の売上高の最大10%に相当する制裁金を科す。さらに違反行為を繰り返すなど、悪質な違反企業には事業の分離や売却を命じる可能性もある。

一方、デジタルサービス法はソーシャルメディアや通販サイトなどを運営する企業に対し、ヘイトスピーチや児童ポルノ、テロを誘発する動画などの違法コンテンツや偽情報、海賊版など違法商品の排除を義務付ける内容。ユーザーの好みや関心事に合わせて表示されるターゲティング広告などに活用されるアルゴリズムについても開示を求める。違反した場合は世界の売上高の最大6%の制裁金を科す。

英がSNS規制強化案、有害コンテンツ放置に巨額罰金

英政府は15日、インターネット交流サイト(SNS)などに対する規制強化案を発表した。児童ポルノやテロを誘発する投稿の迅速な排除を義務づけ、違反した場合は巨額の罰金を科す。子どもの保護を最大の目的として、ユーザーの安全を確保するための措置で、有害なコンテンツに対する事業者の責任を明確にする。政府は2021年に「オンライン安全法案」として議会に提出する。

規制はSNSのほか、検索エンジンやアプリ、ビデオゲーム、アダルトサイト、デートアプリなどに適用される。対象となる運営企業はヘイトスピーチやポルノのほか、いじめや自殺などを助長する投稿を排除する義務を負う。違反した場合、最大1,800万ポンド(約25億円)か、世界売上高の10%のいずれか高い方を罰金として科すことができる。

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