ロシアの国営金融・テクノロジー大手ズベル(旧ズベルバンク)はこのほど、人工知能(AI)に関する若年層向けの国際コンテストの開催を発表した。同コンテストは子供や若者のAIに関する関心を高めることを目的としたもので、1万人の参加規模となる見通し。ロボティクス、無人飛行機、エドテック(教育工学)、金融、セキュリティ、医療、地球観測データなど10の分野を対象としている。
ズベルは昨年11月に「AIジャーニー」と呼ばれる国際会議を開催し、国内外の子供を対象とするAIコンテストの実施を公表していた。
同コンテストの第1段階の選考開始日は2月15日。参加チームが特設のプラットフォーム上で課題をこなして提出する形で行われる。勝ち抜いたチームは4月から7月にかけて行われる次のステップで、上記の10分野から1つの課題を選んでオンラインで提出する。その後残った50チームが100万ルーブル(約1万1,000ユーロ)の賞金をかけてモスクワで開催される本選に出場する。10分野それぞれで勝者を決める予定だ。
国営銀行のズベルバンクを前身とするズベルはIT技術を活用し、金融以外の分野にも積極的に進出しようとしている。ズベルで教育系プラットフォームを担当するマリーナ・ラコバ氏は専門誌『コンピュータ・ウィークリー』に対し、「このコンテストはロシアのAI技術の開発促進を目的とする当社の活動の一環であり、それを強化するものだ」と述べた。
ズベルは数年前からAI分野への投資を増やしている。すでに銀行サービスのシステムや製品にAIが導入されており、顧客サービスや犯罪防止、信用調査などで活用されている。そうしたものの例として、先ごろ提供を開始したサービスで、融資の申請後7分で貸付を完了する「K7M」や、音声アシスタントのアップル「シリ」やグーグル「ヘイ」、アマゾン「アレクサ」に類似したバーチャルアシスタント「サリュート」がある。
ロシア政府は2019年に、30年に向けたAI開発に関する国家戦略を策定。昨年には同国の主要なハイテク企業が参加する業界団体、「人工知能連盟」が設立された。同連盟はAIに関する知見を深めると共に、AIの教育や研究、ビジネスへの導入を促進することを目的としている。同連盟にはズベルのほか、ポータルサイトのメール・ル(Mail.ru)グループ、国営ガスプロム傘下の石油大手ガスプロムネフチ、携帯通信大手MTS、国家ファンドのロシア開発投資基金(RDIF)及びIT大手ヤンデックスが加盟している。
ズベルの株式は政府が50%プラス1株を保有している。(1RUB=1.41JPY)