欧州委が携帯ローミングの新規則発表、無料化の10年延長など

欧州委員会は2月24日、欧州連合(EU)域内の他の国で携帯電話を使用する際に発生する国際ローミング料金の無料化を維持するための新たな規則案を発表した。EUでは2017年6月にローミング料金が撤廃されたが、現行規則は22年6月末で失効する。欧州委はモバイル通信市場で健全な競争を維持するため、引き続きローミング料金を規制する必要があると判断。ローミング無料化を10年間延長するとともに、事業者が他社の回線を使用する際に支払うホールセール料金の上限引き下げを柱とする新ルールを提案した。

EUでは07年6月に採択された「携帯電話の国際ローミングに関する規則」に基づいて、域内の他の国で音声通話、ショートメッセージサービス(SMS)、データ通信を利用する際のローミング料金が段階的に引き下げられ、17年6月15日以降はローミングの廃止により、域内のどこに移動しても自国と同じ料金水準で各種サービスを利用できるようになった。

新たな規則案によると、EU市民は料金面に加え、自国で契約しているモバイルネットワークと同じ通信速度が保証されるようになる。例えば域内のある国で5G契約を結んでいるユーザーが他のEU諸国を旅行する際、その国の事業者が5Gサービスを提供している場合は5Gネットワークへのアクセスが保証される。さらに事業者はユーザーが旅行先で緊急サービスを簡単に利用できるようにすることや、航空会社や保険会社、クレジットカード会社などのヘルプデスク、技術的サポートなどを受けやすいようにし、追加料金が発生する場合は事前に細かく情報提供することが求められる。

一方、国際ローミングのホールセール料金に関しては、ローミング料金の撤廃に合わせて17年6月15日以降、音声通話、テキストメッセージ、データ通信にそれぞれ上限を設けるルールが同年4月に採択された。ホールセール料金を据え置いたままローミング料金を撤廃すると事業者の収益が圧迫され、損失を補てんするため国内料金を引き上げたり、廃業に追い込まれるケースなどが予想されるためで、現在は音声通話が1分当たり最大0.032ユーロ、テキストメッセージは1件当たり最大0.01ユーロ、データ通信は1Gバイト当たり3ユーロに制限されている。データ通信の上限は22年1月から最大2.5ユーロに引き下げられることになっている。

新たな規則案によると、ホールセール料金は22年7月1日以降、音声通話が1分当たり最大0.022ユーロ、テキストメッセージが1件当たり0.004ユーロ、データ通信は1Gバイト当たり2ユーロに制限され、25年1月1日以降はそれぞれ上限が0.019ユーロ、0.003ユーロ、1.5ユーロに引き下げられる。

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