トルコ宇宙計画、影にエルドアン大統領の野心

トルコのエルドアン大統領が2月に発表した国家宇宙計画は、10年間で10件のプロジェクトを実施するという野心的な内容だ。その裏には、自らの功績で「トルコを先進国入りさせる」という野心が見え隠れする。2023年の建国100周年を視野に「建国の父」アタチュルクと並ぶ「偉人」と称されることを目指しているようだ。

ドイツ外交政策協会のアナリストで、ハインリヒ・ベル財団(独・緑の党系シンクタンク)のイスタンブール支部長を務めるクリスティアン・ブラーケル氏は、宇宙計画の狙いとして、(1)経済不振から国民の注目をそらす(2)世界にトルコの力を認めさせ、先進国の仲間入りをする――を挙げる。(1)については、「パンデミックが景気悪化に拍車をかけ、高失業率や高インフレで国民の不満が膨らんでいるのが明白」とみている。

(2)では、トルコを世界10位の経済大国にするという大統領の目標に触れ、「国の威信を高めるのに宇宙計画が役立つことは、最近のアラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機「ホープ」の例をみても分かる」と指摘。トルコは多くの分野でUAEをライバルとみなしており、宇宙開発でも追い上げたいと分析している。

トルコは今年1月、米スペースXに委託して、エアバスと合弁生産した通信衛星と独自開発の科学衛星を打ち上げるなど、宇宙技術分野で地歩を固めつつある。ただ、2018年にようやくトルコ宇宙局(TUA)が設置された事実が示すように、経験が浅い。

トルコの宇宙計画は、人工衛星に始まり、独自の測位システム構築、宇宙船発着基地(スペースポート)整備、23年の月探査船発射、28年の月面無人着陸に及び、高い技術力と膨大な資金力を必要とする。大統領の意気込みは強いが、国家計画が10年という短期間でどれだけ実現するかは不透明だ。

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