新型コロナウイルスの感染拡大防止策をドイツ全国で一律化することを柱とする法案が22日までに連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)で可決された。シュタインマイヤー大統領は同日、署名を済ませており、近日中に施行される見通しだ。
ドイツのコロナ規制はこれまで、メルケル連邦首相と国内16州の首相の会議で決定してきた。規制権限を州が持っていたため、全国一律の規制を国が制定・実施することはできないという事情があった。
各州の足並みをそろえるために開く同会議では利害や思惑を背景に意見調整が毎回、難航した。また、ようやく成立した合意を順守しない州は少なくなかった。
こうした現状はコロナ対策に対する国民の信頼を損なっているうえ、感染拡大に有効に対処できないという問題も引き起こしてきた。
政府はそうした事態を改めるため今回の法案を作成した。人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数(7日間の発生数)が3日連続で100人超となった地域に「緊急ブレーキ」という規制を例外なく適用し、各州の裁量の余地をなくすことが狙いだ。
政府法案には、◇21~5時の夜間外出が原則禁止◇食料品店や薬局、ドラッグストア、本屋、花屋など一部の例外を除き小売店の店舗営業が禁止◇私的・公的な場を問わず家族以外の人と会うことが大幅に制限◇対面授業を行う学校に週2回、抗原検査の実施を義務付け、7日間の発生数が3日連続で200人を超えた地域では対面授業を禁止する――などの規制を適用対象地域で実施することが盛り込まれていた。
このうち夜間外出禁止については野党だけでなく与党内からも批判が出たことから、与党は法案を修正。外出禁止の開始時間を22時へと1時間遅らせるとともに、22~24時については1人での散歩やジョギングを認めることにした。また、対面授業の禁止ラインを200人から165人へと引き下げた。
改正法ではまた、雇用主から在宅勤務の提案を受けた被用者は原則としてこれを受け入れなければならないというルールも導入される。これまでは在宅勤務の提案を雇用主に義務付けるルールはあったものの、被用者は拒否できた。今後はIT環境がないなど自宅で業務ができない正当な理由がない限り在宅勤務の提案を受け入れなければならない。
一方、政府は21日の閣議で、新型コロナ感染を予防するための政令改正を承認した。企業は出社するすべての社員に抗原検査などを週に2回、提供することを義務付けられる。20日に施行されたばかりの同政令では提供義務が原則的に週1回となっていたが、「ウイルスを全力で阻止しなければならない」(ハイル労相)として企業の義務を強化した。