Ifoなど有力経済研究所は15日に発表した『春季共同予測(春季GD)』で、年金受給開始年齢を段階的に引き上げていくよう政府に提言した。ベビーブーム世代(1955~69年生まれ)の定年退職が今後、始まり、ドイツ経済は長期の低成長期に入ることから、就労人口減少対策の一環で定年年齢を高めることは必要不可欠だとしている。
同国では少子高齢化の進展を受けて、公的年金の受給開始の標準年齢が2012年から年1カ月ないし2カ月のペースで引き上げられており、29年には従来の65歳から67歳に上昇することになっている。それでも就労人口の減少に伴う成長鈍化を相殺できないことから、エコノミストの間では年金開始年齢のさらなる引き上げは避けられないとの見方が以前から強い。
Ifo経済研究所のティモ・ヴォルマースホイザー景気調査主任は、ドイツの成長率が今後10年、年1%未満にとどまる見通しを提示。高齢化の影響を全面相殺するために必要な移民の受入数は純ベースで年40万人に上るが、実際の受入数は22万人にとどまると予想されることから、国内の潜在労働力を開拓する必要があると指摘した。具体的には◇税・移転制度の改革による女性と高齢者の就労促進◇仕事と家庭の両立支援◇年金受給開始年齢を段階的に2歳引き上げ69歳とする――を提言している。
新型コロナ危機対策で膨らんでいる財政支出については危機の終了後、速やかに正常化するよう促した。平時に均衡財政を保たなければ、危機に対処する体力をつけることはできないとしている。
今年の国内総生産(GDP)成長率については前回予測(昨年秋)の実質4.7%から3.7%へと引き下げた。新型コロナの新規感染者数が増え、ロックダウン(都市封鎖)が長期化していることから、下方修正が避けられなくなった。コロナ規制は5月に緩和が始まり、9月までに解除されると予想。夏からは経済が急速に拡大するとしている。