ベルリン州の家賃上限規制は違憲、権限逸脱と憲法裁が判断

家賃に上限を設定したベルリン州の法律は国(連邦)の憲法に抵触するとして同州の野党である中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)と自由民主党(FDP)が提訴していた裁判で、連邦憲法裁判所(BVerfG)は15日、原告の訴えを認める決定を下した。同法は州の権限を逸脱するもので無効だとしている。この決定を受け多くのベルリン市民は、同法を根拠に引き下げられていた家賃と大家が求める本来の家賃の差額を支払わなければならなくなった。

裁判官は決定理由で、国が家賃の急上昇抑制ルール(ミートプライスブレムゼ)を2015年に導入し、住宅賃貸契約に関するすべての事柄を単独で規制するようになったことを指摘。これにより家賃の額を州が規制する余地はなくなったとの判断を示した。

ドイツでは住宅不足を背景に大都市で家賃と住宅価格が急上昇。低所得者のなかには長年住んでいた賃貸住宅の家賃を払えなくなる人が出ている。また、ミュンヘンやフランクフルトなどでは富裕層でないと住宅を購入できなくなっている。こうした現状を受けて、連邦政府は賃貸契約時に各地の相場を10%超、上回る家賃を禁止するミートプライスブレムゼを導入。家賃の値上げに歯止めをかけてきた。

だが、十分な効果が上がらないことから、ベルリン州政府は一段と踏み込んだ州法を昨年、成立させ、施行した。同法には建築年と設備の充実度に基づく1平方メートル当たりの家賃の許容上限額が具体的に定められており、新規契約では許容上限を超える家賃を請求できなくなった。既存契約の家賃についても同上限を最大20%上回る水準が請求限度額とされた。

同規制の対象となるのは2013年までに建設された住宅で、およそ150万件が該当する。不動産情報会社F+Bによると、その3分の1に当たる51万2,000件で借り手は同規制の恩恵を受けてきた。

今回の判決を受け賃貸住宅大手のドイチェ・ヴォーネンは差額の支払いを借り手に要求する意向を表明した。請求額は平均430ユーロ。これにより住居を失う借り手はいないと強調している。競合ヴォノヴィアは差額の支払いを請求しない。

緑の党と社会民主党(SPD)、左翼党の3党はそれぞれ家賃規制を国レベルで強化する方針を打ち出している。9月の連邦議会(下院)選挙でこれらの政党が政権を握った場合、家賃をこれまで以上に引き上げにくくする規制が導入される可能性がある。

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