従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は業務の多くの事柄を雇用主と共同で決定する権利(Mitbestimmungsrechte)を持つ。これは事業所体制法(BetrVG)87条に定められたルールで、同条1項第7規定では労災・職業病の防止と健康維持に向けた規則も共同決定の対象とされている。この規定に絡んだ係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が1月に決定(訴訟番号:1 TaBVGa 4/20)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は郵便物と荷物の配送センターを運営する企業の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同社は新しい配送センターの建設を決定した。これを受け事業所委は事故の発生などを防止するための規則を、開業前に共同で作成することを要求。規則作りのもととなる労働現場の危険性を判断するための共同調査の実施に向け被告との交渉を2019年1月に開始した。交渉が停滞しているうちに、配送センターが完成したことから、被告は危険性判断調査を単独で実施したうえで、21年1月に操業を開始した。
原告はこれが共同決定権の侵害に当たるとして提訴。労使が共同で危険性判断調査を行い、規則を作成するまでは操業を認めないよう裁判所に訴えた。
原告は一審と、二審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁でともに敗訴した。決定理由で二審の裁判官はまず、被告は新配送センターの危険性判断調査と規則作成を原告と共同で行わなければならないと指摘した。そのうえで、危険性判断調査を行う時期の決定は共同決定権の対象になっていないと指摘。被告は今後、危険性判断調査と規則作成を原告と共同で実施しなければならないものの、新センターの操業を開始したこと自体には法的に問題がないとの判断を示した。被告が単独で行った危険性判断調査については無効だと言い渡した。
抗告は認めなかった。