特殊化学大手の独エボニックは22日、独バイオ医薬品企業ビオンテックと米製薬大手ファイザーが共同開発した新型コロナウイルスワクチン向けに重要な原料である脂質の供給を開始したと発表した。当初は供給を年央にスタートする予定だったが、ワクチン供給の拡大が生活の正常化や経済回復のカギを握ることから前倒しした。クリスティアン・クルマン社長は「脂質の生産拡大によりワクチン量産が一段と加速される」と述べ、コロナ禍克服への寄与を強調した。
ビオンテック/ファイザー連合は伝令RNA(mRNA)ベースのコロナワクチンを開発した。mRNAは不安定で壊れやすいことから、細胞内に送り込むためには微細な脂質ナノ粒子で包み込む必要がある。この脂質を高品質かつオーダーメイドで量産できるメーカーが世界に数社しかないことから、コロナワクチンの実用化で急速に高まった需要に供給が追い付かない状況となっている。
エボニックはこれを受け2月、脂質の生産能力を短期間で拡大する方針を発表。独南部のハーナウとドッセンハイムの工場に投資を行い、脂質の増産体制を整える意向を表明した。
ビオンテック/ファイザー連合向けに今回、供給を開始したのはハーナウ工場。わずか8週間の準備でフル稼働生産を始めた。