欧州連合(EU)の欧州委員会は3日、インターネット上で本人であることを証明するデジタルIDを域内全域で利用できるようにするためのシステム「欧州デジタルIDウォレット」の導入案を発表した。デジタルIDの管理・運用システムを共通化することで、EU市民や域内の在住者、企業は国境を越えて公的サービスや民間の各種サービスをオンラインで利用できるようになる。欧州委は導入に向けて法制化プロセスを進めるとともに、加盟国や民間企業と協力して2022年9月までに技術的な枠組みや運営上の指針などを策定する。
経済・社会のデジタル化が進展するのに伴い、ネット上で本人を特定するデジタルIDの重要性が増している。EU内では現在14カ国で計19種類のデジタルIDが導入されているが、それぞれ独自のシステムで運用されており互換性が確保されているわけではない。新型コロナウイルス感染拡大でオンラインサービスの利用が急拡大するなか、米アップルやグーグルなどが提供するデジタルウォレットの人気が高まっており、EU主導で共通システムの導入を進めることで、プライバシーや個人情報保護を巡る懸念に対処する狙いもある。
デジタルIDウォレットには国民IDカードのほか、運転免許証などの公的証明書、銀行カード、処方箋、学位などさまざまな情報を保存することが可能で、スマートフォンで本人確認ができるようになる。同システムを利用するかどうかは個人の自由で、どの情報を保存するかは各人が決める仕組み。このためプライバシー侵害のリスクを回避しながら、域内のどこからでも必要なサービスを利用できるようになる。