特殊化学大手の独エボニックは10日、伝令RNA(mRNA)ベースの医薬品を体内の適切な場所に安全に運ぶ医薬品送達システム(DDS)の新たな技術を米スタンフォード大学と共同開発することで合意したと発表した。脂質ナノ粒子(LNP)など脂質を用いた従来のDDSを補完する技術を開発する考え。ポリマーを用いたシステムを商品化して販売するほか、他社にライセンスを供与する。
mRNAはがんや感染症の治療薬、ワクチンとして投入される。独ビオンテック/米ファイザー連合と米モデルナが開発した新型コロナウイルス用ワクチンはともにmRNAをベースとしている。mRNAは不安定で壊れやすいことから、細胞内に送り込むためには微細なLNPなどで包み込む必要がある。
スタンフォード大学のロバート・ウェイマウス教授、ポール・ウェンダー教授、ロナルド・レヴィ教授はポリマーベースのDDSを開発した。エボニックはこれを受けて今回の協業に踏み切った。期間は今月から3年間。mRNAベースの医薬品向けの次世代DDSを開発する目標だ。