ルーマニアのスマート農業市場、拡大への兆し

●欧州最大規模の耕作面積と高度なIT技術が素地に

●同分野の新興企業の資金調達規模は2年強でわずか400万米ドル

情報通信技術(ICT)を活用したスマート農業(アグリテック)がルーマニアで拡大の兆しを見せている。業界に詳しい現地企業らがまとめたアグリテック関連スタートアップに関するリポートによると、同国は欧州でも最大規模の耕作面積と高度なIT技術の双方を備えており、大きな潜在需要が見込まれる。加えて、新型コロナ流行によるロックダウン(都市封鎖)で新たな食品流通のあり方が模索されるようになったことも注目の高まりにつながっている。

同リポートの紹介する新興企業には◇ピーリー(Pheely:皮ごと食べられる青果向けに表面を消毒する効果がある抗菌シール)◇CBNアグロテック(CBN Agro.tech、旧サイロメーター:サイロや倉庫に保管されている飼料の品質維持に役立つIoT製品◇エンテン・システムズ(Enten Systems:穀物農家向け精密農業ソリューション)◇ウェロ(Wello:肥満児向けのAIアプリ)◇エピアリーブック(Apiary Book:養蜂場管理・監視ソフト)◇ヴェノミア(Venomia:蜂毒の採取プロセスの管理・自動化・デジタル化)――などがある。

ルーマニアのスマート農業分野スタートアップの資金調達規模は2019年1月~21年3月までで総額400万米ドル(12ラウンド)にとどまっている。欧州全体(654ラウンド、33億ドル)に比べると、その小ささが際立つ。

リポートの作成に参加したアクティヴァイズ(技術系新興企業のエコシステム支援組織)のミルチェア・ヴァダン氏はそれでも「市場からのシグナルを踏まえればアグリテック分野は今後加速する。将来的にアグリテックがルーマニアの新興企業エコシステムを支える柱の一つになってくれれば」と大きな期待を抱いている。

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