ファラシス―独工場の建設白紙化も―

中国企業ファラシス・エナジーがドイツに車載電池工場を建設する計画が、少なくとも先送りされることが明らかになった。江蘇省鎮江のメイン工場立ち上げに当面、注力することを決めたためだ。欧州生産拠点の設置計画見直しも進めることから、独工場の建設計画が白紙化される可能性も出てきた。欧州法人のセバスチャン・ヴォルフ社長への取材をもとに経済紙『ハンデルスブラット』が報じた。

ファラシスは2019年、独中部のビターフェルト・ヴォルフェンに同社初の欧州工場を設置する計画を発表した。リチウムイオン電池セルとモジュール、電池パックを生産する。当時の発表によると、投資額は約6億ユーロで、そのうち3,000万ユーロを地元ザクセン・アンハルト州の助成金で賄う。年産能力は当初6ギガワット時(GWh)。段階的に10GWhへと引き上げていく。最低600人を雇用する。

同社は戦略提携先の独乗用車大手メルセデスベンツが独米中の工場で生産する電動車向けにセルを供給することをすでに取り決めている。独工場向けのセルはビターフェルト・ヴォルフェンで生産することになっている。

ヴォルフ社長によると、鎮江の新工場立ち上げには巨額の資金と人力を投入する必要があるため、当面は他の工場の建設に手が回らなくなる。このため欧州工場の操業開始は従来計画の22年4月から24年10月へと大幅にずれ込む見通しだ。欧州工場からメルセデスの独工場に供給予定だったセルは当面、鎮江からの輸送へと切り替えて対応する。

鎮江新工場の生産が安定した後は同工場のコンセプトに基づいて欧州工場を建設・運営する。同社長はこれに絡んで、欧州工場の設立地を改めて検討する考えを表明した。ビターフェルト・ヴォルフェンを有力な候補地としているものの、同地に白羽の矢が立てられるかどうかについては明言を避けており、欧州工場を別の場所に建設する可能性を排除できない状況だ。

上部へスクロール