電気通信サービス大手のドイツテレコムは8日、データ主権の保護を重視したクラウドサービスを米IT大手グーグルと共同でドイツの企業などに提供する計画を発表した。事業のデジタル化を推進するためには外部のクラウドを利用することが必要不可欠と考えながらも、社内データへの不正アクセスや法的な不透明性を理由に利用をためらう企業が多いという問題に対応。ドイツテレコム子会社のTシステムズがクラウドの運営と管理を引き受けることで、国内の企業や官庁、医療機関がグーグル提供の最新のクラウドサービスを安心して利用できるようにする。来年半ばからサービスを開始する予定だ。
同サービスを利用する顧客は自社データやソフトウエアを完全に管理下に置くことができる。Tシステムズは不正アクセスを防ぐために暗号化やアイデンティティ管理を引き受ける。データはドイツにあるグーグルのデータセンターで管理されるものの、関連するグーグルのインフラはTシステムズの管理下に入る。メンテナンスやアップグレードなどでこれらのインフラに物理的ないしバーチャルにアクセスする際は両社が共同で行う。
グーグルの本社のある米国で顧客データを管理しないのは、同国のデータ保護水準が欧州連合(EU)に比べ低いためだ。クラウドサービスプロバイダーの選定に際しデータセンターがEU法の適用領域内にあることを絶対条件とする企業は多い。
両社はオーストリアとスイスでも同様のサービスを投入することを検討している。
グーグルは先ごろ、クラウド事業の強化に向け2030年までにドイツに10億ユーロ以上を投資すると発表した。データセンターを増やす意向だ。