被用者が病気で仕事をできない場合、診察医は労働不能証明書(Arbeitsunfaehigkeitsbescheinigung)を発行する。用紙が黄色であることから通称ゲルベシャインと呼ばれるこの証明書を提出した場合、被用者は労働不能とされた期間中、勤務を有給で全面的に免除される。雇用主が当該被用者に仕事をさせることは違法である。ただ、ゲルベシャインの信憑性がときに疑わしいこともある。そうした場合、雇用主は何らかの措置を取れるのだろうか。それとも渋々、疑わしい病休を受け入れなければならないのだろうか。この問題に絡む係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が8日に判決(訴訟番号5 AZR 149/21)を下したので、取り上げてみる。
裁判は被告企業を自己都合退職した被用者が起こしたもの。原告は2019年2月8日に退職届を提出した。退職日は同22日となっていた。
原告は退職届とともにゲルベシャインは提出した。労働不能期間は8~22日で、退職届の提出日から退職日までの期間と完全に一致していた。このため被告雇用主はゲルベシャインの信憑性を疑い、病休時の「賃金継続支給(Lohnfortzahlung)」を拒否。原告はこれを不当として提訴した。
一審と二審で原告は勝訴したものの、最終審のBAGは逆転敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、ゲルベシャインを提出した被用者が実は病気などでないこと、ないしゲルベシャインが明らかに疑わしいことを雇用主が提示した場合、当該被用者は労働不能であることを証明しなければならないと指摘。そのうえで、ゲルベシャインに記された労働不能期間と退職届の提出日から退職日までの期間が完全に一致していたことはゲルベシャインの信憑性を揺るがすものであり、原告には反証で証明する義務があると指摘した。原告は裁判でこの証明をできなかったことから、敗訴した。