ウクライナ議会、暗号資産法案を可決

●暗号通貨人気の高い同国、保有や取引を合法化

●ただし、今後も国内通貨フリブナが唯一の合法的な決済手段

ウクライナ議会は8日、暗号資産を合法化する法案をほぼ全会一致で可決した。暗号資産の法的位置づけをはっきりさせる狙い。保有や取引を合法化する一方、法的決済手段としては認めず、今後も国内通貨フリブナが唯一の合法的な決済手段となる。新法はヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の署名を経て発効する。

暗号資産法では「暗号資産」や「暗号通貨用電子財布」、「秘密鍵」といった関連用語を定義し、暗号通貨の所有者、取引業者、関連企業の権利を明確化した。住民は、ウクライナで登録された国内外の取引プラットフォームを利用して、暗号通貨を保有・取引・両替することが認められる。

■関連企業は正式な事業運営が可能に

関連企業は正式にウクライナで事業を行い、ウクライナに納税することになる。事業登録では、「高い評判を得ていること」と「透明性の証明」が条件となる。営業許可取得費用は3,100米ドルから。不正防止のため、事業者は国に報告義務を負う。

監督業務はデジタル化省、中央銀行、国家保安庁(SBU)が担う。営業許可業務を担当する機関の新設も計画されている。また、デジタル化省によれば、来年から企業や投資家が暗号通貨市場を利用できるようにするため、税法・民法の改正・整備に向けた準備が進行中だ。

■法的枠組みを整え、行き過ぎた規制を回避

ウクライナはこれまで、暗号資産の売買が禁止されてはいないがトラブルに遭っても裁判に訴えることができないという、法的にあやふやな状況にあった。また、関連企業や取引事業者は、資金洗浄を疑う警察の強い監視下に置かれていた。当局の関連事業者に対する措置は厳しく、現地紙『キエフ・ポスト』によると、「理由もなしに高額な設備を押収するケースが多く」みられた。先月にはSBUが、資金洗浄・匿名取引を可能にする「秘密の暗号通貨取引」を行っているとして、あるキエフのネットワークを遮断する措置に出た。

デジタル化省では法的枠組みの整備で、このような例がなくなると説明する。一方で業界関係者は、「規制が強くなりすぎれば関連企業が国外に拠点を移す恐れもある」とみる。

■技術に精通した人の多さ、株式市場の不在が人気の背景

ウクライナでは暗号通貨の人気が高い。ブロックチェーン取引の分析・監視ソフトを開発するチェーンアナリシスによると、2019年7月~20年6月のウクライナ人の暗号通貨受取額は80億米ドル相当、支払額は82億ドル相当に上った。デジタル化省は、◇技術に精通している人が多い◇ブロックチェーン開発に携わっている人が多い◇株式市場が実質的に存在しない――などが暗号資産人気の背景にあると分析する。

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