露サハリン州で鉄道に燃料電池車両導入、政府は水素開発を重点目標に

●ロスアトムやロシア国鉄などが共同で実施

●同州での「水素クラスター」設立に向けた動き

ロシア極東のサハリン州政府、ロシア原子力公社(ロスアトム)と国営ロシア鉄道、鉄道車両最大手トランスマシュはこのほど、サハリン島の鉄道に水素燃料電池車両を導入する共同プロジェクトを実施することで合意した。試験的に7車両を生産するほか、水素関連インフラの整備も行う予定。

ロスアトムが島内に水素の生産施設や充てん施設を建設し、生産から供給、運営も行う計画だ。生産した水素は物流産業などにも供給する。

ロシア連邦政府は2035年までのエネルギー戦略で、水素エネルギーの開発を重点課題の1つに挙げている。サハリン州政府は2025年までに二酸化炭素(CO2)排出ゼロを達成する目標を掲げており、水素関連技術の利用や、水素の生産及び輸出など関連産業の育成に強い関心を示している。

2019年の東方経済フォーラム(EEF)でロスアトムは同州政府およびトランスマシュと、鉄道に水素燃料車両を導入するプロジェクトで協力することで合意していた。その後、同社は州政府及び連邦極東・北極開発省との間で、同州に「水素クラスター」を設立するための基本合意にも調印している。

ロスアトムは今月2日、2024年までに同州に水素生産施設を設置し、翌25年には輸出を開始する計画を発表した。これに関する実現可能性調査は今年中に実施される。当初の年間生産量は3万トンで、30年までに10万トンまで増やしていく予定だ。

同社は今後、国営ガスプロムとの間で水素の原料となるメタンの調達に関し合意する予定。同計画では水素の輸出先として日本の名前が挙がっている。サハリン州政府は今月初め、三菱商事との間で同州における水素クラスターの形成に関し提携していくことで合意していた。

リマレンコ・サハリン州知事によると、水素を窒素と反応させアンモニアとして輸出することも検討されている。州政府は今後水素の生産施設と輸出ターミナルの設置場所を選定する予定だ。

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