独ダイムラーの乗用車・バン子会社メルセデスベンツは24日、欧州競合ステランティスと仏エネルギー大手トタルエナジーズの電池合弁会社オートモティブ・セル・カンパニー(ACC)に資本参加すると発表した。メルセデスは2030年を目途に純粋な電気自動車(EV)メーカーとなるほか、車載電池セルの生産に再参入する方針を先ごろ打ち出しており、これに沿って今回の出資に踏み切った。電池を安定確保するとともに規模の効果でコストを圧縮する狙いだ。
ACCはステランティスと、トタルの電池子会社サフトの合弁会社。メルセデスが出資することで、3社の均等出資会社となる。取引の成立には当局の承認が必要。
メルセデスは7月、従来の「エレクトリック・ファースト」から「エレクトリック・オンリー」へと方針転換し、EVシフトを加速する意向を表明した。これに伴い30年までに年200ギガワット時(GWh)以上の電池が必要となることから、提携を通してセル工場を世界に8カ所、確保する計画。欧州では4カ所を計画している。
ACCは独カイザースラウテルンと仏ドゥヴランにセルとモジュールの工場を設置することをすでに決定している。従来の計画では30年時点の生産能力が計48GWhだったが、メルセデスの出資を受けて、120GWhへと大幅に拡大する意向だ。欧州に新たな工場を設置することを検討する。
ACCの投資総額は70億ユーロ強で、自己資本(出資)と他人資本(債務)、助成金で賄う。メルセデスは最終的に10億ユーロ弱を出資。6人で構成される監査役会に役員2人を派遣する。
メルセデスはACCに技術と生産のノウハウを持ち寄り、自社基準に見合ったオーダーメイドなセルとモジュールの供給を20年代半ばから受ける。これとは別に、本社所在地のシュツットガルトにパイロット工場「メルセデスベンツ・ドライブシステムズ・キャンパス」を設置し、23年からハイエンド・セルの開発を開始する。
ダイムラーは08年、リチウムイオン電池セル、モジュール事業に参入。超小型車「スマート」のEVモデル向けに11年からセルの生産を開始したが、スマート以外に販売先が拡大しないことから、不採算を理由に14年にセル生産から撤退した経緯がある。当時はセルを汎用品とみていた。現在は車両の性能とコストを大きく左右する重要な部品と位置付けている。