不動産大手から賃貸住宅物件を強制的に買い上げることの是非を問う住民投票が26日、ベルリン州で実施され、賛成56.4%、反対39.0%で可決された。投票では具体的な法案が採決されていないため、投票結果に法的拘束力はないものの、州議会と州政府は何らかの対応を迫られることになる。同日の州議会選挙で第一党の地位を保った社会民主党(SPD)のフランツィスカ・ギッファイ州首相候補は27日、「住民投票の結果は尊重され、必要な措置が開始されなければならない」と述べつつも、公有化は憲法上のハードルが高く実現は難しいとの認識を示した。
住民投票は州内に3,000件以上の賃貸住宅を持つ不動産会社の公有化を求めて市民団体が実現したもの。家賃の急騰に歯止めをかけ、手ごろな価格で住宅を賃借できるようにすることを目指している。公有化が仮に実施されると、州内の賃貸住宅の約15%に当たる24万件で所有権が有償はく奪されることになる。協同組合が保有する物件は対象となっていない。
同市民団体は公有化の費用を73億~137億ユーロと試算。買い取り価格は現金でなく、家賃収入を裏付けとする公債で支払うとしている。州政府の見積額は290億~360億ユーロに上り、市民団体との差は大きい。
同州では家賃に上限を設ける州法が2019年に施行されたものの、今年4月に違憲判決が下された。公有化に対しては急進左派の左翼党が全面支持、緑の党が「最後の手段として支持」を表明しているものの、その他の政党は反対の立場だ。次期州首相に就任する見通しのギッファイ氏は、公有化に踏み切れば住宅建設投資が滞り、供給不足を解消できなくなるとの見解を示した。