自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)がドイツの次期政府に対し車分野の政策見直しを提言した。炭素中立実現をにらんだもので、ディーゼル車の優遇措置廃止などを求めている。「トランスフォーメーションを加速する-気候目標を達成する、第20立法期の行動分野」と題した同提言書をもとに経済誌『ヴィルトシャフツボッヘ』などが報じた。
それによると、VWは社用車として用いられるディーゼル車の税負担を重くすることを要求している。ドイツでは社用車を社員に無料で貸与する企業が多いことが背景にある。
社用車貸与は社員に対する非金銭的な便宜とみなされることから、当該社員の課税所得は便宜の度合いに応じて加算される。加算方法には(1)車両のカタログ記載価格の1%を毎月の課税所得に上乗せする(2)運行記録をつけ、私的目的で走行した距離の分だけを上乗せする――の2つがあるものの、(2)は手間がかかり面倒なため、大抵の人は(1)の「1%ルール」を選ぶ。
同社はこの上乗せ比率を1%から1.25%に引き上げることを求めている。
VWは同上乗せ比率がカタログ価格の0.5%に優遇されているプラグインハイブリッド車(PHV)についても0.75%に引き上げることを提言。さらに、優遇対象とするPHVを実際の走行距離の大半を電動走行が占める場合に限定するよう要求した。個人情報保護規制に抵触しない範囲で電動走行距離データを捕捉できるよう法整備を行うことが必要となる。
社員に貸与される電気自動車(EV)については課税所得への上乗せ比率を現行の0.25%に据え置くべきだとしている。EVの販売攻勢を開始したVWに有利なルールを維持したいという狙いが透けて見える。
VWはディーゼル車の燃料である軽油の税優遇についても2022年末で廃止し、ガソリンと同額とすることを提言した。自動車燃料にかかる石油税は現在、ガソリンで1リットル当たり65.45セントに上るのに対し、軽油は47.04セントと低く設定されている。
VWはさらに、内燃機関車に比べて割高な電動車(EV、PHV、燃料電池車=FCV)の普及促進に向けた購入補助金を徐々に減額していき、25年末で打ち切ることも提言した。VWは2万ユーロ程度の小型EVを25年に市場投入する計画のため、補助金がなくてもEVを販売できるようになるとみているもようだ。