市民の半数が22年末の原発廃止に反対、エネルギー価格の高騰で世論に変化

原子力発電を支持する市民がドイツで増加している。世論調査機関ユーガブが日曜版『ヴェルト』紙の委託で10月末に実施したアンケート調査によると、2022年末までに国内の原発を全廃する同国の計画に「絶対に反対」「どちらかと言うと反対」と答えた人は計50%に達した。「計画通りに全廃すべき」は36%で、2年前の調査(19年9月)の60%から大幅に減少している。エネルギー価格の高騰を受け、発電コストの低い原発の評価がにわかに高まってきた。

「二酸化炭素(CO2)の排出削減を低コストで実現できるのであれば、原子力発電所を新設すべきですか」との質問でも、「はい」が44%と「いいえ」(42%)をやや上回った。

ドイツは福島原発事故を受けて11年に原発廃止の前倒しを決めた。その際、政府が臨時に設置したエネルギー倫理委員会が前倒しを提言した。

同委員会の委員を務めた化学大手BASFのユルゲン・ハンプレヒト社長(当時)は最近になって、原発廃止は誤りだったと述べ、政策の見直しを求めた。ドイツが原発だけでなくその後、石炭火力発電の全廃も決定したことを問題視。原発と石炭火力発電がともになくなればエネルギー価格が大幅に上昇し、エネルギーの安定供給と産業競争力が危険にさらされるとしている。石炭発電はCO2排出量が多いため、脱炭素目標を低コストで実現するためには原発を活用する以外に手立てがないとの見方だ。

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