欧州委員会は12月21日、気候変動や環境保護、エネルギー分野の国家補助に関する新たなガイドラインを発表した。2050年までの気候中立を目指す「欧州グリーンディール」の目標達成に向け、加盟国は効率的に脱炭素プロジェクトを支援できるようになる一方、化石エネルギーへの国家補助は厳しく制限される。新ガイドラインは全加盟国の公用語への翻訳作業が完了した時点で有効となる。
欧州委は11月、欧州連合(EU)が推進するデジタル化やグリーン化に対応した競争政策の方向性を示した政策文書を公表し、その中で環境保護やエネルギー分野の国家補助に関するガイドラインを見直す方針を打ち出していた。国家補助ルールを明確化して、単一市場における競争を著しく歪めることなく、欧州グリーンディールの目標達成に貢献するプロジェクトに公的資金を投入しやすくするのが狙いだ。
新たなガイドラインによると、温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーへの転換、エネルギーの安定供給などに加え、建物のエネルギー効率化やクリーンモビリティなど、幅広い分野で公的支援が認められる。特に競争入札を経たプロジェクトでは、資金の不足を100%補助金でカバーすることが可能になり、加盟国は産業界の投資ニーズに対応するため、低炭素発電の支援を目的として政府が炭素価格を保証する「差額決済契約(Carbon Contract for Difference)」など、新たな制度を導入することができる。
一方、火力発電をはじめとする化石燃料事業への公的支援を段階的に停止する。天然ガス事業への新規投資は、EUの気候変動目標に適合していることが証明されない限り、原則として認められない。その一方、電力部門の脱炭素化を促進するため、石炭や泥炭、オイルシェールなどのプラント閉鎖が公的支援の対象となり、例えば職を失った従業員への給付金などを補助金で賄うことが可能になる。
欧州委のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は「グリーン化を推進するには持続的な巨額の投資が必要で、その大部分は民間部門からもたらせるものの、公的支援も重要な役割を担う。加盟国は新たなガイドラインの下で脱炭素化に貢献するプロジェクトへの投資を拡大し、欧州グリーンディールの目標達成に向けた取り組みを加速させることができる」と強調した。