ガスプロム、ポーランドとブルガリアへの天然ガス供給停止

ロシア国営ガスプロムは4月26日、ポーランドとブルガリアの天然ガス輸入業者に
対し、27日から供給を全面的に停止すると通知した。天然ガス代金のルーブル建て
決済を拒否した国に対する初の報復となる。エネルギーの安定確保をめぐり、欧州
の緊張がさらに高まりそうだ。
ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、ポーランドは他の欧州連合(EU)加盟国に比
べても強力にウクライナを支援している。人道的分野はもちろん、軍事面でも積極
的な姿勢で、先週には戦車の提供を発表したほか、ガスプロムを含むロシア富豪・
企業50人・社に対する独自制裁を発動した。
政府は今回の供給ストップについて、備蓄が75%と高水準であることや、国として
対ロシア依存からの脱却に務めてきたことから、事態を乗り切れるという見通しを
示した。
ポーランドはバルト海沿岸で液化天然ガス(LPG)受け入れ基地を運営する。ま
た、今年の10月にはバルティック・パイプが稼働し、ノルウェーからデンマークを
経由してガスを調達できるようになる。
これまで年間需要の45%に当たる90億立方メートルをロシアから調達してきたが、
そのための長期契約も年内に期限が切れることになっていた。
ブルガリアは歴史的にロシアと緊密な関係を築いてきた。しかし、昨年末にキリ
ル・ペトコフ政権が発足して以来、その距離が広がっている。ロシアのウクライナ
侵攻に際しては、対ロ制裁を支持する立場を明確にした。ガス代金のルーブル建て
決済についても「契約に反しており、リスクが大きい」として拒否した。
ブルガリアはガス需要の90%以上をロシアからの供給に頼る。しかし、政府によれ
ば、当面は一般世帯への供給に支障はない見通しだ。他の調達先を模索することに
なるが、これにおいては米国政府も協力する立場を示している。
プーチン大統領は3月末、「非友好国」に対して天然ガス代金をルーブル建てで支
払うよう要求。応じない場合には供給を止めると言明していた。これまでにハンガ
リー以外の全ての国が要求を拒否したが、供給中止は今回が初めてとなる。
EUはロシアに対する制裁を強化しており、ガスプロムを資産凍結処分に処する可能
性がある。8月からはロシア産石炭の輸入を禁止する予定だ。加盟国の中には禁輸
措置を石油・ガスにも広げるよう求める声があり、今後、エネルギー分野における
制裁がさらに厳しくなりかねない。

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