ドイツ政府は25日の閣議で、二酸化炭素(CO2)コスト分担法案を了承した。熱効率が一定水準以下の住宅では炭素税を、暖房を実際に使用する借家人だけでなく家主にも負担させることが柱。熱効率の低い住宅の所有者に断熱改築や暖房の近代化を促し、国内のCO2排出削減につなげる考えだ。法案は議会の承認を経て、来年1月1日付で施行される見通し。
同国では住宅と交通部門を対象とする炭素税が2021年に導入された。暖房油や自動車燃料を購入すると自動的に納税することになる。税額は当初、CO2排出1トン当たり25ユーロだった。22年は30ユーロ、23年は35ユーロ、24年は45ユーロ、25年は55ユーロと毎年、引き上げられていく。26年以降は55~65ユーロの範囲で課税される。暖房油の1リットル当たりの税額は今年が約9.5セントで、25年には約17セントに上昇する。
賃貸住宅の暖房使用に課される炭素税はこれまで借家人が全額、負担してきた。暖房を実際に使用した人が同税を負担するこの方式は受益者負担の原則に合致しているものの、熱効率の改善に向けて住宅の壁や窓、暖房機を近代化するインセンティブは働かない。これでは国のCO2排出削減目標を達成できないことから、政府は熱効率の悪い住宅では家主にも負担を義務付けることにした。
具体的にはCO2排出量に応じて住宅を10段階に区分。1平方メートル当たりの年排出量が12キログラム未満であれば家主の負担を免除するものの、これを超える場合は超過度に応じて家主の負担比率を10%単位で引き上げていく。熱効率が最も低い住宅(同排出量52キログラム以上)では家主の負担比率が90%に達し、借家人は10%となる。クララ・ガイヴィッツ建設相は、住宅の熱効率が高まれば家主は長期的にみてコストを削減できると述べ、借家人だけでなく家主も同法案のメリットを受けると強調した。
経済・気候省によると、一次エネルギー消費量が基準値の55%にとどまる住宅(EH55)よりも熱効率が高ければ、家主の炭素税負担は発生しない。
オフィスなど住宅以外の建造物では家主と借り手が炭素税を一律、折半負担するルールを導入する。一律化することで煩雑な事務手続きが生じないようにする考えだ。
借家人の全国組織DMBによると、断熱改築を施していない住宅に住む標準世帯の炭素税負担額は今年、ガス暖房の場合で130ユーロ、石油暖房の場合で190ユーロに上る見通し。