●中国の対ロシア・ハイテク輸出は3月に激減
●ロシアは禁輸措置に対抗し「並行輸入制度」を導入
欧米などによる厳しい制裁で、ロシアの輸入高が大幅に減っている。アナリストの中には、4月に70~80%減少した可能性を指摘する声もある。国産化や代替輸入の難しいハイテク製品も状況は同じで、すでに不足が顕在化しているもようだ。米国は、制裁に参加していない中国企業も取引を大きく縮小したとみている。ロシア政府系銀行のVEBは、今年は経済が10.2%後退すると予想する。
ジーナ・レイモンド米商務長官は17日、中国の対ロシア・ハイテク輸出が3月に激減したと発表した。3月のノートパソコンの輸出は前月比で40%、スマートフォンは66%、通信ネットワーク設備は98%、それぞれ減少した。ブリュッセルに本拠を置くシンクタンク、ブリューゲルによると、ロシアのハイテク輸入高は約190億米ドルに上る。輸入元の内訳は、欧州連合(EU)が45%で1位。これに米国(21%)、中国(11%)が続く。
米国は、禁輸措置の一環として、米国製の部品や生産設備を用いて作った製品をロシアへ販売した企業に制裁を加える方針を明らかにしたことや、ロシアのウクライナ侵攻に対して世界の大多数の国々が反対していることなどが、中国企業に自制をうながしたとみている。
米国など37カ国が発動した防衛・ハイテク関連制裁では、半導体、通信設備のほか、レーザー、航空用電子機器(アビオニクス)、海上システムの対ロシア取引が基本的に禁じられている。レイモンド商務長官によれば、すでに家電向け半導体が戦車に流用された例が報告されているという。
調査会社IDCで通信端末市場調査を担当するナビラ・ポパル氏は、メーカーが直接、ロシアと取引しなくても、第三国を経由するなどして商品がロシアに輸入される可能性を指摘する。ロシア政府はすでに「非友好国」の企業が特許・商標権を保有する製品をその企業の承諾なしに輸入できる「並行輸入」制度の対象商品リストを発表した。主要な自動車メーカーやテック企業、ファッションブランドなど、多くの企業が含まれる。政府はこの措置について「消費者保護が目的」と説明している。