スウェーデンの電気通信設備大手エリクソンが、年末までにロシアからの完全撤退
を完了する。ロシア・ウクライナ戦争の長期化で、事業再開が難しいと判断したと
みられる。市場シェアが推定20%に上る同社の撤退で、ロシア通信網の維持が一段
と難しくなりそうだ。
エリクソンは29日、ロシア事業を段階的に縮小し、年末までに閉鎖すると発表し
た。同国の従業員およそ400人は年末付で解雇する。解雇に当たって手当を支給す
る。
エリクソンはロシア市場で堅固な地位を築き、移動通信大手MTS、テレ2の両社から
大型契約を受注するなど、ウクライナ戦争まで順調に事業を運営していた。今回の
完全撤退で、移動通信業界では◇基地局の不足◇第三国経由で基地局が調達できて
も製品保証を受けられない◇ソフトウエア関連サポートが利用できない——といっ
た問題が生じる見通し。
この問題を緩和するため、現地経済紙『コメルサント』によれば、エリクソン経営
陣がサポート担当従業員を率いて新会社を設立する可能性がある。また、移動通信
企業がリスク低減のため、自らエリクソンの従業員を雇用することも考えられる。
エリクソンはロシアのウクライナ侵攻を受けて今年4月にロシア事業を停止し、従
業員を有給休暇扱いとした。フィンランドの競合ノキアも同じ月にロシアから撤
退。中国の華為技術(ファーウェイ)は二次制裁を回避するため、新規受注を停止
したうえ、従業員を自宅待機扱いとした。