欧州企業の中国に対する信頼低下、ゼロコロナ政策を批判

欧州商工会議所は9月21日、欧州に拠点を置く企業の間で中国に対する信頼が失われつつあり、投資先としての中国の地位が相対的に低下しているとする報告書を公表した。政府による「硬直した一貫性のない」新型コロナウイルス対策が評価を下げている最大の要因で、「より信頼性と予測可能性が高い」他の市場に将来の投資先をシフトしようとする傾向が強まっていると指摘している。

報告書は欧州商工会議所の会員企業を対象に実施した調査で約1,800社から寄せられた回答をもとに作成したもの。中国のビジネス環境についての分析とともに、中国側、EU当局、欧州企業に対して計967件の提言が盛り込まれている。

 中国に対しては、台湾問題や米国との貿易摩擦など幅広い領域で「一貫性のない政策変更」を差し控えるべきだと指摘。そのうえで、欧州連合(EU)との協力体制を強化し、ビジネス往来の本格的な再開に向けて国際線旅客便を増便するよう要求した。EU当局に対しては、中国と距離を置くよう求める声には従わず、積極的に中国との関係構築に関与する必要性を訴えた。

中国に対する評価が低下している要因としては、硬直した「ゼロコロナ」政策に加え、国有企業改革の遅れや、ハイテク産業に対する規制強化、中国人スタッフに対する海外への渡航制限などを挙げた。

イエルク・ブトケ会頭は記者会見で「イデオロギーのために中国でのビジネス機会が縮小している」と強調。中国以外の国は引き続きグルーバル化を推進しようとしているのに対し、中国は依然として極端に内向きで、この1年間で「中国の他国の違いがより鮮明になった」と指摘した。中国のゼロコロナ政策に関しては、あらゆる面でコストが上昇する中、ほとんどの国が感染状況をコントロールしながら社会経済活動の正常化に向けた取り組みを進めているのに対し、中国はあくまでも新型コロナウイルスの根絶を目指しているが、「当然ながらこれは不可能だ」と断じた。

中国本土では現在も入国時の強制隔離が継続されており、これがビジネス往来を妨げる最大の要因になっている。ブトケ氏は少なくとも10月16日からの共産党大会が終了するまでは、水際対策が緩和される可能性は極めて低いとの見方を示した。

中国外交部の報道官は定例の記者会見で欧州商工会議所の報告書に言及し、「総合的にみれば、中国の感染症対策は最も効率的で費用対効果が最も高い」と強調。また、欧州企業の間で投資先を中国以外の市場にシフトする動きが広がり始めているとの分析に関しては、「今年1月~8月の中国への直接投資をみると、欧州諸国は最も投資が拡大した経済グループにランクされている」と反論した。

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