仏食品大手ダノンは14日、ロシアで展開する乳製品および植物由来食品事業を売却すると発表した。同社はロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けてロシア向けの投資を停止する一方、事業は継続していたが、戦争が長期化する中で最終的に撤退を決めた。なお、乳児用ミルクをはじめとする栄養食品事業は今後も維持する。
ダノンは声明で、同社にとって重要な乳製品および植物由来食品事業の経営権を第三者に譲渡する手続きに入ったことを明らかにし、「現地のビジネスの長期的な継続性を確保するための最良の選択肢と考えている」と説明している。売却先や金額面など詳細は明らかにしていない。同社は事業撤退に伴う費用が10億ユーロ(約1,450億円)程度に上る可能性があるとみている。
ダノンは1992年からロシアで事業を展開しており、約7,200人の従業員を擁する。売却する事業は2022年1~9月期のグループ売上高の約5%を占めた。
ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対する西側諸国の制裁措置に沿う形で、英ユニリーバやスイスのネスレ、米コカ・コーラなど食品・飲料大手が相次いでロシア市場から撤退したり、大幅な事業縮小に踏み切った。ダノンは消費財大手の中でロシア事業が占める割合が高く、乳製品やヨーグルトなどは現地の消費者の健康を維持するための生活必需品と位置づけて製造・販売を続けてきた。しかし、混乱が長引く中で原材料の確保が難しくなり、事業継続が危ぶまれていたとされる。