ガス不足の発生リスクが低下、予想を上回る備蓄拡大で

ドイツ連邦ネットワーク庁は20日、2022~23年冬の国内天然ガス備蓄率に関する新たな予測を発表した。前回の予測を公開した8月初旬以降、状況が改善し、備蓄が予想を上回るスピードで拡大していることを受けたもの。最悪の場合はガス不足が発生する可能性を排除していないものの、そのリスクは低下したとしている。

同国はこれまで強く依存してきたロシア産天然ガスの供給削減・停止を受け、冬季のガス不足が懸念されている。政府はこれを受け、備蓄制度を導入。ガス貯蔵事業者に、毎年9月1日時点で容量の75%、10月1日時点で85%、11月1日時点で95%の確保を義務付けた。

ネットワーク庁の20日付ガス日報によると、全国平均の備蓄率は現在96.49%に上る。国内最大のレーデン貯蔵所では86.62%と平均を下回っているものの、全国レベルでは同庁の従来予測を上回る高水準に達している。

備蓄が予想以上に増えたのは◇ベルギー、オランダ、ノルウェーからの輸入が拡大たうえ、フランスからの輸入も始まった◇ドイツから南欧・東欧への輸出が減った――ためだ。今年末から来年初頭にかけて国内で稼働開始予定の浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)が従来見通しの2カ所から3カ所に増えたこともあり、2022~23年冬の見通しは相対的に明るくなった。

ネットワーク庁によると、ガスの輸入から輸出を除いた純輸入量は10月の現時点で1時間当たり97ギガワット時(GWh)に上る。この量は今後、減少する見通し。暖房の使用が欧州全体で増え、オランダやベルギーからの輸入が減り、東欧や南欧への輸出が増えるためだ。同庁はこれを踏まえ、冬季のガス備蓄率に関する計4つのシナリオを作成した。国内消費が前年比で20%低下するほか、備蓄の取り崩しが10月末に始まることを前提条件としたうえで、平均気温が平年並みとなった場合と、平均気温が平年を下回るうえ2月に厳しい寒波が到来した場合(2012年がモデル)の2ケースを想定している。

平均気温が平年並みとなった場合では1時間当たりの純輸入量が現在よりも19GW少ない78GWhに減少したシナリオと、46GW減の51GWhに減少したシナリオを提示した。前者では来年3月初旬~中旬まで備蓄の取り崩しが続き、備蓄率の底打ちは約54%と比較的高い水準を保つ。このため23~24年冬に向けた備蓄の確保が比較的、行いやすくなる。

これに対し後者のシナリオでは備蓄の取り崩しが来年4月中旬までと長く続き、その時点で備蓄がほぼ底を突くことから、23~24年冬に向けた備蓄の確保が難しくなる。

平均気温が平年を下回るうえ2月に厳しい寒波が到来した場合は、備蓄の減少が早いスピードで進む。純輸入量が78GWhに減少したシナリオでは3月時点の備蓄率が約47%となり、気温が平年並みだった場合を約7ポイント下回る。純輸入量が51GWhへの大幅に減ったシナリオでは2月末時点で備蓄が底を突く。ただ、最悪の場合は今年11月末で備蓄がなくなるとした前回の予測に比べると、国内貯蔵施設が空になる時期が3カ月遅い。

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