蘭国有送電網大手テネットのドイツ事業を独政府が買収する方向で蘭政府と交渉している。独ハーベック経済相が11月30日に明らかにしたもので、再生可能エネルギーの普及を加速するとともに、好ましくない投資家が重要インフラ企業に出資することを防ぐ狙いがある。政府はすでに独送電網会社50ヘルツに20%を出資。今後は独エネルギー大手EnBWの送電子会社トランスネットBWにも24.9%出資する公算が高く、同国の送電網は国有化の方向に向かっている。
ハーベック氏はテネットの独子会社、テネットTSOの過半数株取得を目指していることを明らかにした。ロイター通信によると、完全買収する可能性もある。来年上半期の取引完了を見込んでいるもようだ。
ドイツでは電力価格の引き下げを狙った欧州連合(EU)の送電分離政策を受け、電力大手の大半が2000年代に送電部門を手放した。発電事業と送電事業を現在もともに手がけるのはEnBWだけだ。テネットTSOは独エネルギー大手エーオンの元送電部門で、テネットは09年に取得した。
ドイツではテネットTSO、トランスネットBW、50ヘルツ、アンプリオンの計4社が送電事業を展開している。このうち50ヘルツに対しては中国国営の国家電網(SGCC)が20%の出資を計画したことから、政府は安全保障上の懸念を踏まえて阻止。SGCCが取得予定だった同20%を、政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)を通して08年に買い上げた経緯がある。
独裁国家の中国は国外への影響力強化を目指している。ロシアのウクライナ進攻でロシア産化石燃料への強い依存がもたらすリスクが鮮明になっていることもあり、欧州では経済で国が果たす役割が再び大きくなっている。