対ロ制裁による凍結資産をウクライナ復興資金に、「特別法廷」設置も提案=欧州委

●ウクライナの損害は約6,000億ユーロに上る見通し=欧州委試算

●欧州委高官「凍結資産没収にはG7などの協力が不可欠」

欧州委員会は11月30日、ウクライナへの軍事侵攻を受けて米欧などが発動した制裁で凍結したロシアの資産を活用し、ウクライナの復興資金に充てる方針を発表した。ロシアの戦争犯罪を裁くための「特別法廷」を欧州連合(EU)主導で設置する案も示した。今後、閣僚理事会で欧州委の提案について検討する。

欧州委はロシアの侵攻によるウクライナの損害が約6,000億ユーロ(約86兆円)に上ると試算している。フォンデアライエン委員長は声明で「ロシアは自らが引き起こした破壊の代償を払わなければならない。ロシア政府や(プーチン政権を支える)オリガルヒ(新興財閥)はウクライナに損害を賠償し、国を再建するための費用を負担する必要がある」と強調した。

EUや米国など西側諸国はこれまでにロシア中央銀行の資産約3,000億ドルを凍結した。また、EUは制裁対象となっているオリガルヒなどの個人と団体が保有する銀行預金や不動産など、約190億ユーロの資産を凍結している。

欧州委高官はロイター通信などに対し、凍結資金を没収するには法的な問題を解決する必要があり、簡単ではないとの認識を示したうえで、主要7カ国(G7)など国際的なパートナーの協力が欠かせないと強調。具体策として中銀などの資産を運用する基金を設立し、その収益をウクライナの復興資金に充てる方法などを検討しており、近く開かれるG7のタスクフォースで欧州委案を提示すると説明した。

一方、ロシアを裁くための専門の裁判所は、ウクライナ侵攻に責任のある政治家や軍関係者を調査・訴追するのが狙い。ロシアの戦争犯罪については既にオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)が捜査を始めているが、ロシアがICCに加盟していないため、実際には訴追が困難とみられ、ウクライナのゼレンスキー大統領も特別法廷の設置を強く求めている。フォンデアライエン氏はEUとしてICCの活動を引き続き支援しながら、「国連の支援を得て特別法廷の設置を提案する」と述べた。

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