●完成車生産を重視していた従来戦略を見直す
●部品国産化に向け23~25年に3,000億ルーブルを支出
ロシアが2035年を見据えた自動車産業長期戦略を更新した。完成車生産を重視していた従来戦略を見直し、自動車産業の「基礎」である材料・部品の国産化に照準を当てる。昨年2月以来の対ウクライナ侵攻で、世界市場からの孤立化が進む現状に対処する狙いだ。
部品国産化では、1963年に市場導入されたV8エンジン「ZMZ-53」の改良型の生産にも力を入れる。米フォードやマツダ、いすゞと提携していたソラーズがニージニーノヴゴロド州のザヴォルジエ工場(ZMZ)で、改良型の「ZMZ-523」(124英馬力[hp]=92.5キロワット[kW])とLPGハイブリッドエンジン「ZMZ-524」(138hp=102.9kW)を製造する。
「国産化率の高い」自動車開発も推進する。乗用車では、国産化率を現行の43%から26年に65%、40年に70%へ拡大させる。また、完成車市場における国産車シェアも昨年の35%から26年に68%、30年に81%へ引き上げることを目指す。
部品国産化に向けて、23~25年に3,000億ルーブル(44億米ドル)を支出する。予算の一部は研究開発(R&D)に充てられるが、従来通り、その比重は大きくない。自動車購入刺激策には年間260億ルーブル(3億7,800万ドル)を投入する。
ウクライナ戦争を機に、自由主義諸国の自動車メーカーが次々とロシアから撤退した。禁輸措置で、これらの国々からの部品調達も難しくなった。アジア太平洋地域からの輸入は輸送時間・コストがかかるため、部品不足を解消できない。国産化戦略はこれを踏まえた結果だ。
昨年1—11月期のロシア乗用車・小型商用車販売台数は59万8,886台で、前年同期実績を60.7%も下回った。通期生産台数も60万台を切り、前期比で60%減ったとみられる。
特に、手ごろな価格帯の現代、起亜ブランド車の販売停止が市場の大幅縮小につながった。その穴は中国産の小型車が埋めると見込まれており、ロシアのディーラーは今後数年、中国車がシェア70%を占めると予想している。(1RUB=1.88JPY)