●重力蓄電は揚水発電と同じ原理で、位置エネルギーを応用する
●専門家らは同技術の普及には大きな進歩が必要と指摘
重力を利用して電力を地下に貯蔵する特許技術を持つ英国の新興企業グラヴィトリシティ(Gravitricity)が、チェコ国有のディアモ(DIAMO)およびオストラバ工科大学と提携する。チェコ東部の廃坑に重力地下貯蔵施設を建設する狙い。早ければ2026年にも稼働する計画だ。予想投資額7億コルナ強(約3,000万ユーロ)のうち、半分以上をグラヴィトリシティが負担する。同社はさらに欧州連合(EU)のイノベーション・ファンドから資金を調達したい意向だ。
施設の具体的な立地は決まっていないが、候補地はいずれもモラビア・スレスコ州にある。ダルコフ炭鉱が最も有力視されている。グラヴィトリシティでは、最初のプロジェクトがうまくいけば、チェコで、さらに2~3施設を設けたいとしている。
再生可能エネルギーの利用拡大に向けては、電力の需要量と供給量の差(インバランス)をどう調整するかが大きな課題だ。グラヴィトリシティの技術は位置エネルギー(高い位置にある物体が持つエネルギー)を応用したもので、揚水発電と原理は同じ。余剰電力を利用して引き上げたおもりを、電力不足時に落下させ、そのエネルギーで発電する。主な蓄電技術の一つであるリチウムイオン電池に比べて◇環境負荷が小さい◇バッテリー寿命が長い◇低コスト――という特長がある。また、廃坑を再活用することで◇既存インフラの再利用◇高失業率地域で雇用を創出――という利点もある。
グラヴィトリシティはすでに実証設備を通じて、自社の技術が実際に機能することを証明した。ただ、専門家らはこの技術が広く普及するには、大きな進歩が必要と指摘している。
チェコでのプロジェクトも、まずは事業化調査から取りかかる。(1CZK=6.08JPY)