自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)が車載電池セル工場の建設計画で欧州よりも北米を優先するとの観測が浮上している。英『フィナンシャル・タイムズ』は8日、VWは米国でインフラ抑制法(IRA)に基づき最大100億ユーロの補助金を受けられる見通しを踏まえ、東欧にセル工場を設置する計画を凍結し、北米での計画を優先すると報じた。同社の広報担当者は、東欧と北米でともに適地評価を行っていると述べるとともに、2030年までに欧州に計240ギガワット時のセル生産能力を確保するとした計画に変更はないと強調。そのうえで、グリーン産業の競争力強化に向けた欧州連合(EU)のグリーンディール計画が制定・施行されるのをVWは待たなければならないとして、同計画が確定するまで欧州のセル投資プロジェクトを見合わせる可能性を示唆した。
一方、VWのトーマス・シュマル取締役(技術担当)はビジネス向けSNS「リンクトイン」に、「IRAの条件はとても魅力的であるため、欧州は巨額投資を巡る競争で敗れる恐れがある」との投稿を行った。EUは中国、北米と同等の国家助成策を打ち出さなければ対抗できないとしている。同氏はまた、IRAがすでに施行されているのに対し、グリーンディールは策定段階にとどまっていることを指摘。EUにスピードアップを要求した。