●貿易協定の締結により、EU企業は米市場にアクセスしやすく
●希土類などの調達で「脱中国依存」を図る狙いも
欧州委員会のフォンデアライエン委員長は10日、バイデン米大統領とホワイトハウスで会談し、電気自動車(EV)などに不可欠な重要鉱物を巡り、新たな貿易協定の交渉を開始することで合意した。米国のインフレ抑制法に盛り込まれたEV購入時の税優遇措置について、車載電池の調達要件を緩和し、欧州連合(EU)からの調達品も適用対象とする方向で調整する。
米国のEV購入支援策は、減税でEVの普及促進を図りながら、中国製品のシェア拡大を阻む狙いがある。ただ、北米地域での最終組み立てを要件とするほか、車載電池の原材料である重要鉱物の調達先を米国、および米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限しているため、EU側はEV製造やグリーン技術などを手がける域内の企業が競争で不利になったり、生産拠点を北米に移す事態を懸念している。
米国との間で貿易協定が締結されれば、EU域内で加工・調達された重要鉱物を電池に使用したEVも税控除の対象となり、EU企業は米市場にアクセスしやすくなる。また、EUと米国が協力してサプライチェーン(供給網)を構築し、特にレアアース(希土類)やリチウムなど中国が高いシェアを占める鉱物資源の調達で「脱中国依存」を図る狙いもある。
フォンデアライエン氏とバイデン氏は共同声明で「対象となる重要鉱物について、直ちに貿易協定の締結に向けて交渉を開始する」と表明した。「こうした協定は鉱物資源の生産や加工を促進し、持続可能で信頼できる供給源へのアクセスを拡大するという共通の目標を推進するだろう」と指摘。サプライチェーンにおける特定の国への「不要な戦略的依存」を減らし、同盟国や友好国で重要鉱物を安定的に調達できる体制を構築する必要があるとの考えを示した。