●委員長は台湾問題で習氏と応酬も、マクロン大統領は融和姿勢
●「我々と無関係の世界の混乱や危機」と距離を置くべき=仏大統領
欧州委員会のフォンデアライエン委員長とフランスのマクロン大統領が5~7日に中国を訪問し、それぞれ習近平国家主席と会談した。フォンデアライエン氏が台湾問題で習氏と応酬したのに対し、融和的な姿勢のマクロン氏は異例の歓待を受け、対中スタンスを巡り一枚岩ではないEUの姿が浮き彫りになった。
フォンデアライエン氏は6日に北京で習氏と会談した。フォンデアライエン氏は会談後の記者会見で、台湾を巡り習氏と議論したと説明。「台湾海峡の安定は極めて重要であり、一方的な力による現状変更はすべきではない」と述べ、台湾への圧力を強める中国をけん制した。
中国外務省によると、習氏は会談で「台湾問題は中国の核心的利益の中の核心だ」と強調。「台湾問題で中国に妥協や譲歩を期待するのは妄想だ。他者を傷つけようとすれば、逆に自分が傷つくことになるだろう」などと述べ、「1つの中国」原則に立ち入ることを許さない姿勢を改めて示した。
フォンデアライエン氏はまた、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻との関連で、「国連安全保障理事会の常任理事国として中国には大きな責任がある。ウクライナの主権と領土の一体性を尊重する公正な平和のため、中国が役割を果たすことを期待している」と発言。習氏に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領と対話するよう促したところ、習氏からは「条件と時期が整えば」対話が実現するとの言質を得たことを明らかにした。
一方、マクロン氏も6日に習氏と会談し、ウクライナ情勢を巡り、核兵器の使用に反対する姿勢で一致した。また、マクロン氏は中国側に対し、軍事侵攻を続けるロシアに武器を供与しないよう強く求めた。
マクロン氏は7日に広東省広州市の大学で講演した後、習氏とともに共同声明を発表。「ウクライナの平和回復に向けたあらゆる努力を支持する」と表明した。また、経済面の連携強化に向けて相互にビジネス環境の改善に取り組むことや、新興国への財政支援などでも協力することで合意した。
マクロン氏は台湾問題をめぐり、仏経済紙レゼコーなどが9日に報じたインタビュー記事で、「欧州は米中に追随すべきではない」との考えを示した。同氏は「最悪なのは、欧州が米国の動きや中国の過剰反応に追随し、同調しなければならないと考えることだ」と述べ、欧州は「自分たちとは関係のない世界の混乱や危機」にとらわれるべきではないと主張。米国と中国の対立から一定の距離を保ち、「第3の極」を目指して安全保障やエネルギー政策などで戦略的自立性を確保すべきだとの持論を展開した。