欧州委が汚職対策に関する法案発表、第三国による汚職犯罪への制裁可能に

欧州委員会は3日、EU全体で汚職・腐敗防止の取り組みを強化するとともに、第三国による人権侵害に対する制裁措置を大規模な汚職に適用できるようにするための法案を発表した。重大な汚職が法の支配、人権、民主主義といったEUの基本理念を損なう恐れがあることから、汚職犯罪を刑事罰の対象とし、EU全体で罰則を調和させることや、第三国による大規模な汚職に対応するため、EU共通外交・安全保障政策(CFSP)の枠組みで制裁体制を整備することなどを提案している。

EUでは昨年12月、サッカー・ワールドカップ(W杯)開催国のカタールが関与したとみられる汚職事件に絡み、欧州議会の副議長ら5人がベルギー捜査当局に逮捕される事態に発展した。人権問題で国際社会から批判されているカタールが、W杯を前にイメージ改善のためエバ・カイリ元副議長らに金品を渡していたとされる。同月のEU首脳会議ではEUの基本理念である法の正義を尊重するため、汚職・腐敗防止に向けた取り組みを強化する方針で一致し、欧州委が具体策を検討していた。

法案によると、汚職として訴追される犯罪の定義を統一し、贈収賄だけでなく、横領、不正蓄財、職権乱用、さらに汚職犯罪に関連した司法妨害など、あらゆる形態の汚職を訴追しやすくする。また、汚職・腐敗防止対策の専門機関を新たに設置し、各国の捜査当局などと連携して十分な人的資源や訓練の機会を確保する。さらに利益相反の開示などを通じ、公共部門が最高水準の説明責任を果たすことを保障する。

一方、第三国による汚職への対応策として、汚職犯罪に関与した人物に対し、CFSPの枠組みで制裁を科すことができる体制を整備する。これにより、加害者に対しEUへの渡航禁止や、EU域内の資産凍結などの措置を講じることが可能になり、EUの政治的影響力が不当に利用される事態を防ぐことができる。

今後、欧州議会と閣僚理事会で法案について討議する。

上部へスクロール