ディーゼル車の排ガス浄化装置の機能が一定の外気温下で違法に低下・停止する場合はたとえ過失であったとしても製造元に損害賠償を支払う義務が発生するとの判断を、ドイツの通常裁判の最高裁である連邦司法裁判所(BGH)が26日の判決で示した。同国の裁判ではこれまで、浄化装置の違法が故意であれば損賠責任があるものの、過失であればないとの判断が示されてきたが、欧州司法裁判所(ECJ)が過失の場合も責任が発生するとの判決を3月に下したことから、BGHはこれを踏まえて今回の判決を下した。
裁判はフォルクスワーゲン(VW)、アウディ、メルセデスベンツのディーゼル車(VW「パサート」、アウディ「SQ5」、メルセデス「Cクラス」)を購入した顧客が3社を相手取ってそれぞれ起こしたもの。購入した車両は排ガス浄化装置の機能が一定の外気温下で違法に低下・停止するとして損害賠償の支払いを請求している。
欧州連合(EU)では外気温が低い場合などに、エンジンを保護するために排ガス浄化装置が作動しないようにすることが認められている。そうした正当な理由がないにもかかわらず作動を停止・制限するシステムは違法となる。
ドイツの裁判ではこれまで、排ガス浄化装置に違法性が確認されても、顧客が損賠請求できるのは故意の場合に限られるとの判決が下されていた。BGHは今回の判決で、過失の場合も損賠請求権があるとの判断を提示。原則的に購入価格の5~15%が妥当な損賠額だとの判断を示したうえで、裁判を下級審に差し戻した。
差し戻し審では違法性の認定がカギを握ることになる。被告のVWとメルセデスは、認可当局である独連邦陸運局(KBA)の型式認定で違法性がないことが証明されていると指摘。賠償責任は発生しないとの見解を示している。
ディーゼル車の排ガス浄化装置に違法性の疑いが持たれているのは、独メーカーだけでない。日本を含む他国のメーカーも警察当局の捜査対象となっている。
日本車のケースでは、外部から調達した製品が違法なものだった疑いがある。故意には当たらないにしても、過失責任を問われる可能性がある。