航空機エンジン大手の独MTUエアロ・エンジンズが2月29日に発表した2023年12月期
決算の純損益は9,700万ユーロの赤字となり、前期の黒字(3億3,300万ユーロ)か
ら大幅に悪化した。通期赤字の計上は1934年の創業後初めて。エアバスの旅客機
「A320ネオ」向けに米同業プラット・アンド・ホイットニー(P&W)、日本航空機
エンジン協会(JAEC)と共同開発したエンジン「PW1100G-JM」に不具合が見つかっ
たことが直撃した格好だ。
PW1100G-JMはP&Wが主導して米独日の5社が共同開発したエンジン。高圧タービ
ン・ディスクと高圧コンプレッサー・ディスクの材料に不純物が混入していたこと
が9月に明らかになったことから、追加の検査プログラムを実施しており、23〜26
年のエンジン整備回数は当初計画に比べ600〜700回増える見通しとなっている。ま
た、エンジン取り卸しの増加でスペアエンジンが不足し機材の運航に支障が出るた
め、補償義務も発生する。
MTUはこれを受け引当金およそ10億ユーロを計上したことから赤字に転落した。こ
の影響がなければ純利益は25%増の5億9,400万ユーロに拡大していた。
ラース・ヴァーグナー社長は記者会見で、P&Wを相手取って損害賠償訴訟を起こす
考えはないことを明らかにした。その理由として◇数十年に渡る両社の長いパート
ナーシップがある◇30年以上前に両社が締結した契約のなかに今回のような問題が
起きた場合の取り決めがある——を挙げた。コンペンセーションの可能性について
はすでにP&Wと協議を行っているという。
MTUの業績自体は好調で、特殊要因を除いたEBITは25%増の8億1,800万ユーロに拡
大した。売上高は1%増の53億6,300万ユーロで、売上高営業利益率は前期の12.3%
から12.9%に上昇した。
24年12月期は売上高で73億〜75億ユーロ、売上高営業利益率で12%超を見込む。25
年12月期に売上高で80億ユーロ、営業利益で10億ユーロを達成するとしたこれまで
の目標を据え置いた。