BEVの次はロボット、中国勢の低価格品を欧州が警戒

欧州のロボット業界が中国勢への警戒感を強めている。低価格を武器に欧州市場の
攻略を進めているためだ。ソーラーパネルや電気自動車(BEV)に次いでロボット
が将来の通商摩擦の火種となる可能性が出てきた。経済紙『ハンデルスブラット』
が10日付で報じた。
中国は世界最大の産業ロボット市場で、2022年の新設台数は29万台を超えた。世界
のその他の国の合計を上回る。中国政府がロボット分野で世界を主導する国になる
ことを目指しているという事情もあり、同国市場ではすでに現地勢の勢力が強く
なっている。
国際市場ではこれまで中国メーカーの存在感は低かった。だが、最近は国外進出を
図る企業が増えている。中国ロボット産業連盟(CRIA)のXiaogang Song専務理事
は、欧州市場が過去数年間、年率5%のスピードで成長したことを指摘。中国メー
カーの進出先として魅力があることを示唆した。
独業界関係者によると、中国製品は欧州製品に比べ通常20〜30%安い。価格差が
50%に達することもある。このため、資金力が弱くこれまでロボットを使ってこな
かった小企業や手工業者にとっては手の届く製品として購入の対象となり得る。
中国メーカーは販売促進に向け、独・EUで販売・サービス拠点の構築にも乗り出し
ている。協働ロボットのドボットはフランクフルト南部のノイイーゼンブルクに欧
州本部を開設。エリートロボットはバイエルン州グライゼンフェルトに拠点を構え
た。文化の異なる欧州市場にスムーズに参入するため現地企業を買収するケースも
ある。
中国勢の存在感の高まりは欧州メーカーにとってすでに圧力となっている。独ノイ
ラ・ロボティクスのダニエル・レーグナー社長は、商談で価格を引き下げるために
中国製品を引き合いに出されることがあると述べた。
一部の分野では中国勢が高い技術を持つようになっている。CRIAのSong氏は、画像
処理システムや人工知能(AI)アプリケーションでは中国企業に強みがあると明言
した。
中国製のロボットにはITセキュリティ上の懸念がある。IoT機能を通して企業秘密
が筒抜けになる可能性を排除できないためだ。大手企業はこうした事情を踏まえ、
ロボット購入プロセスの最初の段階からIT責任者に関与させ、取引先に対し具体的
な要件を突き付ける。一方、中小企業は価格と迅速な設置を重視するため、ITセ
キュリティへの関心は低いという。

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