ウィーン国際比較経済研究所(WIIW)が12月17日発表した調査によると、外国資本
による東欧諸国におけるグリーンフィールド投資計画の発表件数は、2024年1-9月
期に前年同期実績を44%下回り、投資予定額でも39%縮小した。東欧の欧州連合
(EU)加盟国および西バルカン6カ国の投資計画件数は40%減少した。地政学的な
不確実性やドイツ産業界の不振が原因と説明している。
国別でみると、件数が増えたのはモルドバのみ。EU加盟国のなかではブルガリア、
ポーランド、エストニアで半減した。アルバニアでは観光業界の成長が続いている
ものの、グリーンフィールド投資件数は88%の大幅減となった。
投資予定額ではエストニア、リトアニア、コソボなど8カ国で前年同期を上回っ
た。モンテネグロとウクライナ、ボスニア・ヘルツェゴビナでは投資額の減少幅が
件数のそれよりも大きく、投資の重点が資本集約型産業からサービス業へ移ってい
る様子がうかがわれた。
投資元を国別でみると、中国が投資予定額ベースでトップを維持した。2位のドイ
ツの投資額が67%も減ったのに対し、中国の下げ幅は30%にとどまった。ただし、
外国直接投資(FDI)の累計で中国は1%を占めるにすぎず、EU加盟国の約70%との
差は歴然としている。歴史的に東欧との関係の深いオーストリアは、件数を56%減
らした一方で投資予定額は20%増加した。ただし22年同期実績の20%という低い水
準であることには変わりない。
中国の投資先を国別でみると、23年はルーマニアの件数が最も多く、上海汽車集団
(SAIC)が電動車工場設置を予定するスロバキアへの投資予定額が最も大きかっ
た。中国は自動車・バッテリー工場という資本集約型産業への投資が目立った。
東欧へのFDIが減少している背景に、コスト安を強みに外国企業の製造拠点として
の役割を果たすという従来の投資誘致戦略が機能しなくなってきた可能性がある。
バイデン米大統領の「インフレ抑制法」で米国への投資が増え、例えばドイツのグ
リーンフィールド投資額は22年1-9月期に東欧が米国を40%上回っていたが、24年
1-9月期は米国が東欧の3倍弱と状況が逆転した。EUにおけるエネルギー高騰も相
まって、コスト面で東欧の競争力が弱まっていることがうかがえる。WIIWでは持続
可能な経済成長のため、教育、研究開発、産業政策への投資、また、考え抜かれた
産業政策が必要と指摘している。