TDK(東京都港区)は1日、独子会社のエプコスを通して仏センサーメーカーのトロニクス・マイクロシステムズ(以下、トロニクス)を買収すると発表した。TDKはセンサー事業の強化を重要戦略の一つとして進めている。トロニクスの買収により、産業機器、自動車、情報通信技術(ICT)分野で成長している慣性センサー市場への参入が可能になる。仏当局の認可を得て、9月初旬から株式の公開買い付け(TOB)を実施する予定。
エプコスはトロニクスの全ての発行済み株式を7月7日の終値に78.4%のプレミアムを上乗せした1株当たり13.20ユーロで公開買い付けする条件で合意した。買収価格は総額で4,865万ユーロとなる見込み。
買収成立の条件は発行済み株式の66.67%の取得が条件となる。発行済み株式の53.21%を保有する複数の株主はすでに株式公開買い付けに応じる意向を示している。また、トロニクスの経営陣は公開買い付け後に、ストックオプション付き株式13万5,000株を売却する。
ただ、トロニクスに20.9%を出資するタレス・アビオニクスは、引き続きトロニクスの株式を保有する意向を表明している。このため、エプコスとタレス・アビオニクスは買収取引成立後に両者間の関係を定めるための株主間契約を締結することで合意した。
■ 新市場で事業拡大
トロニクスは1997年の設立。フランスのクロルに本社を置く。高付加価値のナノ・マイクロシステム分野で高い技術を持ち、微小電気機械システム(MEMS)の設計・量産・販売を事業とする。2015年の売上高は約780万ユーロ。従業員92人のうち技術者・研究者が55人を占めている。
機器や装置の小型化が進む中、MEMS技術はセンサー市場で重要性が増している。トロニクスは、一つのパッケージに複数のセンサー機能が搭載された慣性センサーソリューションを可能にするMEMS技術を持っており、このような小型センサーは、産業用ロボットや自動運転車、ドローン配達サービス、ハイテク家電、あらゆるものをネットワークでつなぐモノのインターネット(IoT)などの成長分野で今後需要が増えると期待されている。
TDKはセンサー事業の強化を進める中、2015年12月にはスイスの磁気センサーメーカー、ミクロナスセミコンダクタホールディングの買収を発表した。