欧州委が反ダンピング制度改正案発表、中国「市場経済国」認定を視野に

欧州連合(EU)の欧州委員会は9日、ダンピング(不当廉売)対抗措置を強化するための制度改正案を発表した。中国から安価な鉄鋼製品が大量にEU市場に流入し、域内産業を脅かしている現状を踏まえ、世界貿易機関(WTO)の規定に基づき中国が「市場経済国」として認定された場合でも、ダンピングに対して効果的に対抗策を講じることができるようにするのが狙い。閣僚理事会と欧州議会で欧州委の提案について協議する。

中国は2001年にWTOに加盟した際の議定書で、加盟から15年間は非市場経済国として扱われることを受け入れた。この規定が12月11日付で失効するため、中国政府はその後自動的に市場経済国に移行すると主張している。しかし、市場経済国に認定した場合、中国からの安価な輸入品に対して反ダンピング措置を発動することが困難になり、自国の製造業者はより一層厳しい競争にさらされることになる。このためEU、米国、日本などは認定の可否を改めて判断する方針を示しているが、これに対して中国が反発を強め、WTOの協定違反で提訴する構えをみせている。そこで欧州委は7月、現状では中国を市場経済国として認定することはできないとの見解を示したうえで、市場経済国に移行した場合でも反ダンピング課税などと同等の対抗策を講じることができるよう、現行制度の見直しに着手した。

WTOルールでは、輸出国の国内価格よりも低い価格で輸出された製品が、輸入国の国内産業に損害を与えている場合、価格差相当額の範囲で反ダンピング関税を賦課することが認められている。ただ、新興国などでは政府が企業の生産や輸出に実質的な補助金を出すケースがあり、適正な製品価格が分かりにくい。そこでWTO協定ではこうした国を「非市場経済国」と位置づけ、経済状況などが似通った第3国の製品価格を基準に反ダンピング措置を発動できるようにしている。

欧州委は12月以降に中国の非市場経済国としての地位が失効した場合を念頭に、WTO加盟国で輸出補助金などによる市場の「著しい歪み」が国内価格に影響を及ぼし、それによって輸入国の産業が損害を受けた場合、輸出国と経済状況などが似通った第3国の製品価格をもとに対抗策を講じることができるようにすることを提案している。歪みの有無は当該国の全般的な通商政策、国営企業の市場シェア、金融部門の独立性などが判断基準となる。

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