デジタル単一市場戦略の中間報告、欧州委が3分野で追加措置を検討

欧州連合(EU)の欧州委員会は10日、デジタル単一市場の創設に向けた戦略の進捗状況に関する中間報告を公表した。同委は2年前に打ち出したデジタル市場の統合に向けた重点政策に基づき、これまでに35の法案と政策案を提示してきたが、早期実現に向けて欧州議会と加盟国の「政治的合意」が鍵を握ると指摘。さらなる取り組みが必要な領域として、データ経済の自由化、サイバーセキュリティ対策の強化、インターネット産業のエコシステムにおける責任あるプレーヤーとしてのオンラインプラットフォームの推進――の3分野を挙げている。

欧州委が2015年5月にまとめたデジタル単一市場戦略は、EUが成長戦略の柱と位置付ける高速インターネットを基盤とする経済活動(デジタル経済)を活性化させるため、情報通信技術(ICT)、メディア、著作権など幅広い分野で国ごと異なる規制や制度を見直し、国境を越えたオンライン取引やコンテンツ流通を妨げる障壁を取り除くという内容。オンラインサービスへのアクセス改善、国境をまたいだ電子商取引の推進、国境を越えたコンテンツ流通を阻害する原因となっている著作権制度の改革などを優先課題と位置づけ、目的に沿って規制案や政策案を打ち出している。

追加的な取り組みが必要と判断した3分野のうち、データ経済の自由化に関しては、個人情報以外の各種データを加盟国間で円滑にやりとりできるようにするため、今秋の法案提出に向けて欧州委が準備を進めている。サイバーセキュリティ戦略に関しては9月までに現行規定を見直し、追加的な対策案をまとめる。

一方、オンラインプラットフォームを利用したビジネスに関しては、検索エンジンやインターネット経由で音楽や動画コンテンツを配信するOTTサービスなどの分野で、グーグルやアップルなどが支配的な地位を乱用し、公正な競争が阻害されていると指摘。年末までに、プラットフォームと事業者間における不公正な契約や取引週間を排除するための法案をまとめる方針を示している。