日欧EPAが妥結、投資紛争解決制度は協定から分離

日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)締結交渉が8日に妥結した。双方の立場に隔たりが残っていた投資をめぐる企業と国家間の紛争処理に関する項目を協定から切り離し、関税分野を先行して発効させることで合意に達した。議会の承認手続きなどを経て2019年の発効を目指す。発効すれば世界の国内総生産(DGP)の約3割、貿易額の約4割を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。

日欧EPA交渉は今年7月、関税分野と知的財産保護などのルール分野で大枠合意に達したが、投資家保護などの項目では双方の溝が埋まらず、年内の最終合意を目指して協議が続いていた。5日からブリュッセルで開いていた首席交渉官会合でも投資紛争の解決制度をめぐって合意することができず、同項目を協定から分離することで、交渉全体の妥結を優先させた。

関税分野では、品目数ベースで日本側が94%、EU側が99%の関税を撤廃する。日本側は現在29.8%の関税をかけているカマンベールやモッツァレラなどのソフトチーズに低関税の輸入枠を設け、初年度の2万トンから16年目には最大3万1,000トンに枠を広げて段階的に関税を撤廃する。欧州産ワインについては協定の発効後、関税を即時撤廃。パスタとチョコレート菓子も発効後10年で関税を撤廃する。さらに欧州産の牛肉や豚肉に対する関税も段階的に削減する。

一方、EU側は日本製の乗用車にかけている10%の関税を協定発効から8年目に撤廃するほか、自動車部品については貿易額ベースで92.1%にあたる品目について、協定発効後、直ちに関税を撤廃する。緑茶、しょうゆ、日本酒や焼酎などの関税も即時撤廃する。

欧州委員会は日欧EPAが発効すると、日本への輸出が34%拡大し、EUのGDPを最大で0.76%押し上げると試算している。マルムストローム委員(通商担当)は記者会見で「対日EPAはEUにとって最大の自由貿易協定になる」と強調。チーズやワインなど農産品を中心に日本への輸出が大幅に増えるとの見方を示した。一方、協定から切り離した投資紛争解決制度に関しては、EUが環太平洋経済連携協定(TPP)などに盛り込まれている「投資家対国家の紛争解決(ISDS)」条項に代わるメカニズムとして、常設の投資裁判所の設置を求めているのに対し、日本側は引き続き「古いシステム」の導入を訴えていると指摘。「さらに協議を進めて隔たりを埋める必要がある」と述べた。

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