英国のメイ首相は8日、在英日本企業の幹部らを首相官邸に招き、英国の欧州連合(EU)離脱に伴う通商上の課題などについて意見交換した。離脱決定を受けて英国に進出している企業の国外移転が相次ぐなか、英側は離脱後もEUとの間で可能な限り関税や障壁のない貿易環境の確保を目指すと強調し、日本企業に事業や投資の継続を呼びかけた。
会合には日本側から日立製作所、日産自動車、トヨタ自動車、三菱商事、三井住友銀行、みずほ銀行、ソフトバンクなど18社の幹部が出席。英側からはハモンド財務相、フォックス国際貿易相などが加わった。
会合後に取材に応じた鶴岡公二駐英大使によると、メイ氏はEU離脱を機に、これまで以上に海外に目を向け、EU以外の幅広い貿易相手国と自由貿易協定(FTA)を結ぶ「グローバル・ブリテン」構想などについて説明するとともに、離脱後の激変緩和のための「移行期間」を設ける方針を強調した。同大使は「日本に限らず、どの国も利益が出なければ英国での事業継続は困難だ」と語り、企業が事業を続けやすい環境を維持するよう要請した。
英国には約1,000社の日系企業が進出している。大半の企業はEU離脱後も欧州事業の拠点を英国に残す方針だが、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)はオランダのアムステルダムにEU域内における証券業務の新たな拠点の設立を決めるなど、一部で英国事業の見直しが進められている。