英政府は欧州連合(EU)離脱の移行期間について、期限をEU側の要求より遅らせることを求める方針だ。2月21日に公表した文書で明らかにしたもので、双方の通商をはじめとする新たな関係がスムーズに始動するための準備にかかる時間を逆算した上で、必要に応じて期間を延長することを提唱している。
「移行期間」の設定は、英国の離脱直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため、英政府側が求めているもの。英国とEUの自由貿易協定(FTA)が離脱日までに締結できない場合に備え、FTA交渉の時間を稼ぐ意図もある。英国は2019年3月末に離脱することになっているが、同期間中はEU単一市場にとどまり、実質的にEU離脱が遅れることになる。
英国は当初、移行期間を2年程度としたい考えだったが、EUは1月に採択した交渉指針で、これより短い1年9カ月に設定し、期限を2020年12月末とする方針を打ち出していた。
英政府は同日公表した移行期間をめぐる協議の指針を示す文書で、同期間を「2年程度とする点では同意する」としながらも、「将来の関係を支える新たなプロセス、システムの準備、実施にどれだけの時間がかかるかによって決めるべきだ」と指摘。EU側に期間延長を求めていくことを示唆した。
移行期間をめぐっては、EU側は厳しい条件を英国に突きつけている。英国は期間中にEUの意思決定に参加できず、EUの法令が適用され、EUのルールに違反した場合にEU単一市場へのアクセスを制限する制裁措置を発動する仕組みを設けるといった内容だ。これに英国は反発しており、2月上旬に行われた移行期間の関する初の協議は不調に終わった。英政府は今回の文書で、条件緩和を求める方針も示した。
英国側は3月22~23日に開催されるEU首脳会議で移行期間について合意し、最大の焦点となる通商協議の開始にこぎ着けることを目指している。しかし、条件に加えて期間設定についても交渉が行われることで、合意がずれ込む可能性が出てきた。