適用除外求めて対話を優先、米輸入制限で対抗措置も準備=欧州委

トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムの輸入制限発動を命じる文書に署名したことを受け、欧州委員会は対話を通じて対象からの除外を求める一方、協議が決裂した場合は報復関税や世界貿易機関(WTO)への提訴などの対抗措置も辞さない構えをみせている。トランプ氏は米国が欧州連合(EU)に対して抱える貿易赤字を問題視し、EU側が貿易障壁を撤廃すれば、米国も鉄鋼とアルミニウムの関税対象からEUを除外すると述べるなど強硬姿勢を崩しておらず、関税が導入される23日に向けて攻防が激しくなりそうだ。

欧州委のマルムストローム委員(通商担当)は10日、EU本部でライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と会談し、トランプ氏が8日に正式決定した輸入制限について協議。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の高関税を課す措置はWTOルールに抵触すると訴え、同盟国のEUを対象から除外するよう求めた。しかし、同日行われた日米欧の通商閣僚会合でも3者が緊密に対話を続ける方針を確認するにとどまり、具体的な進展はなかった。

欧州委は7日に米国による輸入制限への対抗策について協議し、関税が導入された場合はただちにWTOに提訴するほか、米国からEU向けに輸出される28億ユーロ相当の製品に25%の報復関税を課す方針を固めた。マルムストローム氏によると、報復関税の対象にはバーボンウイスキー、ピーナツバター、ハーレーダビッドソン(大型二輪車)、リーバイス(ジーンズ)などが含まれる見通し。さらに米国の輸入制限を受けて欧州市場に鉄鋼などが大量に流入する事態を防ぐため、セーフガード(緊急輸入制限)の発動も検討する。

トランプ氏は輸入品の増加で国内の鉄鋼・アルミ産業が弱体化すれば「米国の安全保障が脅かされる」と主張し、輸入制限の必要性を訴えている。その一方で、同盟国に対しては交渉次第で関税の適用を除外する可能性も示しており、実際は中間選挙を控えて国内産業の保護を正当化しているとの見方が一般的だ。9日にはオーストラリアを対象から除外する方針を表明しており、軍事面で同国から何らかの譲歩を引き出したとみられている。

欧州委のカタイネン副委員長は9日の会見で「適用除外の基準が不明」と指摘。当面は対話を通じてEUを輸入制限の対象から外すよう訴える方針を示したうえで、米国が実際に関税を導入した場合は報復関税などの対抗措置を講じる構えをみせた。

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